温暖化防止、シナリオ2050
温暖化-日本と世界の気温上昇
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下記の改訂版をアマゾンの電子書籍で出版しました
常識的に考える日本の温暖化防止の長期戦略


          (同書の第1章の概要)

1. 気温上昇

日本の気温
 気象庁は、現在全国1300余りの観測地点(アメダス形式)を有し、そのウェブサイトで、古いものでは明治時代からの気象データを閲覧することができます。
 図-1.1は、1876年(明治9年)からの年平均気温の推移です。なお2014年12月の気温観測データから、観測地点は千代田区大手町の気象庁本庁の構内から、皇居に隣接する北の丸公園内に移転したことで、最低気温の月平均値などは、1℃くらい低くなったようです。
 図-1.1に付記した赤線は、変動する気温グラフをExcelの機能を用いて直線近似したものです。近似直線によると、1876年から2018年までの約140年間に、東京の年平均気温は約3.5℃上昇しています。


 昔と比べて暑くなったという実感を確かめるには、年平均気温よりも年最高気温を調べるべきでしょう。図-1.2は同様に気象庁のデータで、年最高気温の推移を示しました。赤色の近似直線で、年最高気温も3.5℃近く高くなっています。

 図-1.3は関東5地点について、明治から現在に至る年平均気温の推移と近似直線を示しました。熊谷、前橋、宇都宮はほぼ同じ傾きで、東京よりも傾きは小さいのですが、同期間に約2.5℃上昇しています。また、水戸の近似直線は、それらよりも傾きは小さいのですが、それでも約1.8℃の気温上昇があります。
 これらの気温上昇には、都市化の影響(ヒートアイランド現象)が含まれています。


 気象庁は、都市化の影響が少ない地点として網走など国内15か所の平均気温の上昇を報告しています。
 図-1.5は、それを東京都と比較したものです。両者とも1900年を基準にした気温上昇を示しています。両者の差が概ね都市化の影響と見做せると思います。
 なお、都市化の影響が少ない地点のグラフでも、過去120年間に約1.4℃の気温上昇が認められるのは、陸域の気温であることの影響が大きいと考えます。



世界の気温
 本書では、世界の平均気温上昇のデータとして、IPCCの報告書の他に、Berkeley Earthのウェブサイトに掲載されているデータを利用しています。なお、地球温暖化でいう世界の平均気温とは、陸域における地表付近の気温と海面水温の平均です。

 Berkeley Earthは2010年に、 カリフォルニア大物理学教授Richard  Muller等により、地球温暖化懐疑論の懸念事項を検証するために設立されたと記されています。
 下図は世界の平均気温上昇は、都市化によるものではないか、という疑念に応える調査結果です。左側グラフの赤線は全ての陸域のデータに基づく平均気温の推移、青線は都市化の影響が少ない田舎のみのデータの平均気温です。右側のグラフは、全てデータの平均気温から、田舎の平均気温を差し引いた値の推移です。両者の差は誤差範囲であると述べられています。詳しくは、Berkeley Earthのレポートを参照下さい。 


 Berkeley earthによる調査結果として、世界の陸域の平均気温は過去250年間で1.5℃上昇したとされます。その陸域の平均気温の推移は、大気中のCO2濃度と、火山噴火による大気中の硫酸塩濃度を考慮した単純モデルによるフィッティングが温度記録と良い一致がみられ、一方、太陽活動の変動(太陽黒点数の変化)は、フィッティングの改善に寄与しなかったと報告されています。そのことから、温暖化の最も簡単な説明は人間の温室効果ガス排出であることが示唆されると述べられています。
 下図は36,000以上の測定場所の気温データから決定された地球の陸域の平均気温の推移です。大気中CO2濃度に、火山噴火のみを考慮した単純モデルが黒の太線で併記されています。10年単位の短期急激な気温変動は、エルニーニョやガルフストリームなどの海流の変化が原因と考えられています。

 図-1.8には、Berkeley Earthが公開しているデータを用い、世界の陸域と陸+海の平均温度の変化を示しました。陸域気温よりも海面水温の上昇の方が小さいため、同図のような差異が生じます。併記している120区間(10年間)移動平均のグラフは、陸域も陸+海ともに、過去170年間の変化は単調に上昇している訳でないことが分かります。

 2100年に、どのくらい気温が上昇するかは関心事でしょう。図-1.13に、1980年~2019年のトレンドで気温上昇が続いた場合の2100年の値を示しました。赤線で示した陸域の平均気温は、2020年現在よりも2.2℃くらい高くなることになります。