ウクライナ、今あるリスク

なぜ、ウクライナは侵攻前に中立化を提案しなかったのか


(2023.2.24)


 ロシアの侵攻直後
THE TIMES OF ISRAEL(2022年2月25日)によれば、ロシアが侵攻した日の真夜中過ぎ、ゼレンスキー大統領は、国民に向けたビデオ演説で次のように語ったと報じています。

“We have been left alone to defend our state,” Volodymyr Zelensky said in an emotional video address to the nation after midnight. “Who is ready to fight alongside us? I don’t see anyone. Who is ready to give Ukraine a guarantee of NATO membership? Everyone is afraid,” he added.

ゼレンスキー大統領は短期にNATOに加盟できないことは理解していたと思いますが、ロシアが侵攻した時には、欧米の一部でもウクライナのために軍隊を派遣することを期待していたのかもしれません。しかし、軍隊を派遣する国は一つも無く、自国のみで戦わなければならないことを嘆いています。

侵攻翌日のREUTERS(2022年2月25日)によれば、ウクライナ大統領顧問は、「ウクライナは中立的な地位についてロシアとの交渉の準備ができている」と語り、「ウクライナは現在、NATO にも EU にも加盟していませんが、どちらにも加盟したいと考えており、かつての支配者であるモスクワには嫌悪感を抱いている。」と語っています。

侵攻直後にロシアと中立化について協議できるなら、なぜ侵攻前に中立化と安全の担保について協議しなかったのかと考えます。ウクライナが中立化を表明すれば、恐らくロシアの侵攻を回避できたと思われ残念です。侵攻により、ウクライナ国民だけでなく、世界80億の人々が少なからぬ迷惑を被っているのですから、なんとしても回避すべきだったと思います。

主な関係者は、プーチン大統領、ゼレンスキー大統領、バイデン大統領、NATOのストルテンベルグ事務総長と首脳、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長などです。
1番悪いのはプーチン大統領ですが、善玉悪玉論で単純化するのではなく、2番目に悪い人、3番目に愚かな人など、妥協点を見出す努力をほとんどせずに侵攻に至った経緯を知ることは、今後のために重要です。侵攻1年を機に、ウクライナのNATO加盟問題を中心に、インターネット情報により調べてみました。

情報源
①Ukraine–NATO relations–Wikipedia
②ゼレンスキー大統領の就任演説(英語版)
③ゼレンスキー政権の国家安全保障戦略(ウクライナ語版)
④ウクライナとNATO加盟などに関する英文報道

上記のうち、ウクライナとNATOの関係についてのウィキペディアは、図表と265件の参考文献リストを除いてA4なら20頁以上の力作です。ソ連が崩壊しウクライナが独立した1990年以降の経緯が掲載されています。2022年9月から掲載開始されたもので、日本語版はまだ無いため、ご存知ない方も多いと思います。

本稿は、ウクライナとNATOの関係の全体像をこのウィキペディア情報で、ゼレンスキー政権での状況を、「大統領就任演説」とその14か月後に出された「国家安全保障戦略」の情報に、主に英文報道情報を補足して示しました。

NATO関係、ゼレンスキー政権以前

ソ連崩壊とウクライナ独立に先立つ1990年7月、ウクライナ・ソヴィエト社会主義共和国最高会議は、ウクライナ国家主権宣言を採択しました。そこには、「軍事ブロックに参加せず、非核三原則を順守する永久に中立な国家になる意図」があると宣言しました 。

しかし、1991年に独立を果たしたウクライナ最初のクラフチュク政権は、NATO加盟を目指す意向を表明しました。

ウクライナ独立以降現在までの約30年、6つの政権がありましたが、ヤヌコーヴィチ政権(2010-2014)の中立化政策を除くと、NATO加盟を優先課題としてきました。NATO加盟は、安全保障に係わる問題と認識されてきました。

一方、NATO加盟に関するウクライナ国民の世論調査では、加盟賛成が反対を上回るのは2014年のロシアによるクリミア併合以後のことです。また、2014年以降も賛成50%前後、反対30%前後の場合が多く、賛成が急上昇するのはロシアの侵攻が現実味を帯びてからです。親ロシアの人がかなりいるためか、NATO加盟に関しロシアの脅威を感じる人が多いためか、筆者には判断できません。何れにしても、ウクライナの国民感情は、政権と少し違っていたようです。



NATO加盟国は現在30か国で、旧ソ連邦構成国やワルシャワ条約機構の国々も、1999年にチェコ、ハンガリー、ポーランド、2004年にバルト三国、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニア、2009年にアルバニアなどが加盟しています。

しかし、現在に至るもウクライナは、NATOに加盟していません。それはウクライナが、NATOの加盟基準を満たしていないためです。RadioFreeEurope/RadioLiberty(2019年2月19日)によれば、ゼレンスキー大統領が就任する3か月前、前任のポロシェンコ大統領が、ウクライナがNATOとEUのメンバーになることを約束する憲法改正に署名した際に、自国が両機関に参加する基準を満たすには「長い道のり」を歩む必要があると述べたと報じています。

政治経済の面でウクライナの特徴を、「欧州で最も貧しい国の一つで汚職大国」とする表現がみられます。図-2には、ヨーロッパに中央アジアを加えた国々について、2021年の人口1人当たりのGDPを示しました。データが無い小国3カ国を省略し、2020年と2019年データで代替した3カ国が含まれています。下から4番目がウクライナです。報道映像では、ウクライナがそれほど貧しく見えないのは、物価が安いためかもしれませんが、GDPからはこのような評価になります。



表-1には、Transparency Internationalが公表している2022年の腐敗認識指数を示しました。順位が116番のウクライナとともに、腐敗の少ない上位5か国、主要国、EU加盟国のラスト、NATO加盟国のラストなどを示しました。ウクライナの汚職問題は、NATO加盟基準を満たせない代表的な事項です。



NATOの加盟基準を満たしていないウクライナでしたが、ウクライナ最初の政権の頃から、NATOは関連会議への参加を受け入れ、NATOのパートナーシップ国として合同演習なども実施するようになりました。

2008 年 4 月にブカレストで開催された NATO サミットで、NATO はジョージアとウクライナにまだ加盟を提案しないことを決定しました。しかし、NATO のスヘッフェル事務総長は、ジョージアとウクライナが最終的にメンバーになるだろうと述べました。なお、フランスとドイツから抵抗があったと伝えられています。

一方、ロシアはゴルバチョフやエリツィンも、NATOの東方拡大に異議を唱えていました。プーチン大統領も2008年2月、隣国ウクライナがNATOに加盟し、米国のミサイル防衛シールドの配備を受け入れる場合、ウクライナをミサイルの標的にする可能性があると述べたと報じられています。

2008年12月スペインで開催された会議で、NATOのスヘッフェル事務総長は、「ロシアとの良好な関係と、NATOの更なる拡大のどちらかを選択する必要があるでしょうか? 私の答えはノーです。私たちはどちらかを選択せず、どちらかを犠牲にすることはありません」と述べています。この時点では、NATOは東方拡大してもロシアにも配慮していたことが窺われます。2014年のクリミア併合が、ロシアに対する姿勢を変えたものと思われます。

ウクライナの歴代大統領は、ロシア周辺国の首脳と同様に、ロシアは危険な国と認識し、注意を払ってきたものと思います。

ゼレンスキー大統領の就任演説
ゼレンスキーは2019年5月20日、ウクライナ第6代大統領に就任しました。就任演説は、私たち一人一人が大統領です。一人一人が責任を負い、ウクライナの繁栄のためにあらゆることを行う、というような話で始まっています。ケネディー大統領が就任演説で「国家が国民に何ができるかではなく、国家のために何ができるかを問うて欲しい」と述べたことを思い出しました。

具体的な任務としては、「我々の最初の任務はドンバスでの停戦です」、次の課題として「失われた領土を取り戻すことです」と述べています。失われた領土とは、クリミアとドンバスのことです。

ウクライナにとって、ドンバスの停戦と失われた領土を取り戻すことは、非常に重要であることに疑いありませんが、極めて困難な課題です。前者は民族問題ですから、簡単に解決できるものではありません。後者については、クリミア半島だけでも九州の3/4近い面積ですから、日本が北方四島の返還に苦労していることを考えると、ほとんど不可能に近いように思われます。

ゼレンスキー大統領は、先ず汚職の撲滅に着手しました。これには、NATO加盟基準を満たす目的もあったのかもしれません。しかし、汚職撲滅は、ほとんど成果を上げられなかったと多くの人が評価しています。

ゼレンスキー政権の国家安全保障戦略
Atlantic Council(2020年9月30日)によれば、何ヶ月もの遅れの後、ゼレンスキー大統領は、ついにウクライナの新しい国家安全保障戦略を承認しました。新しい安全保障の青写真には、ゼレンスキー大統領によく見られるあいまいさや婉曲的な表現がほとんど含まれていません。代わりに、ロシアは侵略者として繰り返し特定されており、NATO への加盟はウクライナの主要な国家安全保障目標として頻繁に言及されています。前任者の2015 年の国家安全保障戦略よりもNATO加盟は大幅に明確になっています。

ゼレンスキー大統領は、就任初期はロシアにソフトに対応していたと言われます。しかし、国家安全保障戦略を承認するまでの半年間、ゼレンスキー大統領は、ロシアの脅威について思い悩んだ末、大統領就任演説で述べた「ドンバスでの停戦と失われた領土を取り戻す」ことを、NATO加盟に託したものと想像されます。

筆者は、上記ロシアとの問題の解決策について、国家安全保障戦略には具体的にどの様に記載されているのか関心を持ち読んでみました。ウクライナ語版であったため、Google翻訳を利用して一通り目を通しました。以下に原文と日本語訳のPDFを示します。
ウクライナの国家安全保障戦略PDF(原文)
ウクライナの国家安全保障戦略PDF(日本語訳)

具体的解決策は下記の2項でした。

国家安全保障戦略:
40. ウクライナは、主に紛争拡大に対する潜在的な負担をロシアが受け入れられない水準まで引き上げることで、ロシアとの紛争拡大を防止する措置を講じる予定としている。優先すべき対策の方向は、防衛と治安能力の強化、ウクライナへの国際的支援の強化、国際援助の効果的な利用、侵略者に対する国際的な政治的、経済的、法的圧力の維持である。

41. 国益、特にロシアによる侵略の停止、領土保全の完全な回復、ウクライナ市民および企業体の権利、自由および正当な利益の保護を確保するために、EU および NATO 加盟のパートナー国、ならびに欧州安全保障協力機構(OSCE)の仲介を通じ、ウクライナはロシア連邦との交渉を行う。

上記に対する筆者の感想は、ロシアの新たな侵攻は抑止できても、失われた領土を取り戻すことは到底できないだろうというものです。しかし、現実はロシアの侵攻も抑止できませんでした。一方、ロシア侵攻による国の大幅な破壊と引き換えに、武器支援がエスカレートし、失った領土を戦闘により取り戻す可能性も少しですが出てきました。

ロシアの脅威に対し、自国の力だけで未然に防ぐことができないウクライナが、EU、NATO、OSCEやその加盟国による支援強化を安全保障戦略とするのは妥当なことと思います。

ロシアの侵攻後、ゼレンスキー大統領はビデオメッセージを世界中に送り、ロシアの戦争犯罪を指摘し裁判をやって見せ、戦況に関する徹底した情報管理と発信など、上記40.項を忠実に実行しています。

ロシアの侵攻への序曲
国家安全保障戦略が承認された直後に時間を戻します。これまでの政権以上にゼレンスキー政権は、NATO加盟の希望を明確にし、NATO側もそれに応じるにつれ、プーチン大統領の懸念は強まったものと想像されます。2021年4月頃には、ウクライナ国境付近でロシア軍の増強が開始されました。

2021年6月のNATOサミットで、NATOの指導者たちは、2008 年のNATOのブカレスト・サミットの決定を繰り返し、ウクライナはNATO MAP(加盟行動計画)を伴う同盟のメンバーとなる、ウクライナは自身の外交政策を外部干渉なしに決定する権利を有すると表明しました。

ストルテンベルグ事務総長は、「NATO のメンバーになることを熱望するかどうかを決定するのは、ウクライナと 30 の NATO メンバー次第です。 ロシアは、ウクライナが同盟のメンバーであるべきかどうかについて発言権を持っていません」と述べました。

11月28日、ウクライナは、ロシアが国境近くに 92,000人近くの軍隊を集めていると警告しました。ロシアは、ウクライナが独自に軍事力を増強していると非難し、NATO には決して加盟しないという「法的保証」を要求しました。

11 月 30 日、プーチン大統領は、ウクライナにおける NATO のプレゼンスの拡大、特にモスクワを攻撃できる長距離ミサイルやミサイル防衛システムの配備は、クレムリンにとって「レッドライン」の問題になると述べました。

また、米国とその同盟国との対話において、NATO のさらなる東進と、ロシア領土のすぐ近くで私たちを脅かす兵器システムの配備を排除する合意をまとめることに固執すると述べました。

ストルテンベルグ事務総長は、「ウクライナがいつNATOに加盟するかを決定するのは、ウクライナと30のNATO同盟国だけだ。ロシアには拒否権はなく、ロシアには発言権がなく、ロシアには近隣諸国を支配しようとする勢力圏を確立する権利はない」と答えました。

以後、ロシアとNATOは、同様の趣旨の発言の応酬を繰返し、妥協点を見出す努力がほとんど無いまま、2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻に至りました。侵攻直前のロシアとNATOの詳しい対応について、上記ウィキペデアに記載されている「ロシアによるウクライナのNATO非加盟の保証要請」を引用し、本稿末尾に掲載しました。


以上が、文献に記載されている発言・出来事を繋ぎ合わせ、ロシアの侵攻に至る経緯を示したものです。以下は、国際政治に無縁の筆者の考えを記載したものであることをお断りしておきます。

主権国家
ウクライナは主権国家だから、NATOの加盟をロシアに干渉されるいわれは無いということには、筆者は少し補足が必要と考えます。

ロシアの周辺国は、ロシアは危ない国として注意を払ってきました。スウェーデンやフィンランドは、第二次大戦後70年以上中立を保ってきました。台湾はウクライナより豊かで、表1に示した腐敗認識指数も25位のしっかりした国です。国民は国連に参加し、オリンピックに代表を送りたいと考えていることでしょう。しかし、中国の侵攻のリスクを避けるため我慢しています。

例えば、第二次のキューバ危機を想像してみてください。親米的でない中南米諸国を中国が自国の陣営に取り込み、キューバと軍事同盟を結んだとします。中国がキューバの基地に長距離ミサイルを配備しようとしたら、米国は放置しないでしょう。キューバからワシントンDCまでは、直線距離で約1,700 kmで、超音速ミサイルなら10分未満で到達する距離です。露骨な軍事進攻はしないと思いますが、その他のあらゆる手段を尽くして防ごうとすると思います。

日本だって日米安全保障条約により守られているため、日本の都合で何でも好き勝手にできるわけではありません。主権国家なら何でもできるほど、国際政治は単純ではないと考えます。

侵攻前の中立化
本稿冒頭の問について考えてみます。先ず、NATO加盟に関するウクライナの状況を次のように考えます。

①現状ウクライナはNATOの加盟基準を満たしておらず、基準を満たす改革には数年を要すると考えられています。また、ロシアとの紛争を抱えるウクライナが、集団防衛義務があるNATO加盟国になるのは無理だろうと考えられています。ロシアとの紛争をNATO加盟により解決しようとする考えには無理があるということでしょう。


②ロシアを明確に脅威とし、その対策としてNATO加盟目標を鮮明にしたことで、ロシア侵攻の脅威が高まったと考えます。そこで、ゼレンスキー政権が中立政策に変更したら、支持率が低下し政権を維持できなくなったかもしれません。

③NATO加盟国ではないがNATOの支援があるので、ロシアは侵攻しないと考えたのかもしれません。それとも、ロシアが侵攻したら、NATO諸国が軍隊を派遣してくれると考え、戦闘により領土を取り戻すことを考えたのかもしれません。

筆者の想像は、NATO加盟により「ドンバスでの停戦と失われた領土を取り戻す」ことは無理かもしれないが、他に対策がないため、NATO加盟の目標を下ろすことはできなかった、というものです。また、中立化により政権維持が困難になる可能性も考慮したのかもしれません。

おわりに、今あるリスク
悪いのはプーチンです。それでも、国家の危機を回避するのが、国のリーダーの役目だと考えます。その点で、テレビドラマを見て、政治経験が無い演者を大統領に選んだことは、結果的に有能であったとしても、まともな対応ではありません。日本人も他山の石とすべきです。

ところが、自国の甚大な被害と引き換えに、欧米による武器支援がエスカレートし、戦闘により領土を取り戻せる可能性が出てきました。ゼレンスキー大統領は、ロシアを追い出しクリミアを取り返すと表明しています。そのため、安全保障戦略の「ウクライナへの国際的支援の強化、国際援助の効果的な利用、侵略者に対する国際的な政治的、経済的、法的圧力の維持」を懸命に実行しています。国民世論も領土奪還まで戦い続けることを支持しているようです。

毎日ウクライナの気の毒なテレビ映像を見て、世界世論は武器支援の強化を支持するようになりました。しかし、クリミア奪還が現実のものに近付いたら、ロシアの核兵器使用のリスクが高まります。軍事専門家はかなり先のことと考えているようですが、世界世論は思わぬ形で国際政治を動かすかもしれないのです。核兵器の使用は直接の被害とともに、戦争を変化させ、NATOが戦争に巻き込まれる可能性が高まります。NATOが参戦したら、ロシアは国家の存亡をかけて戦うことになり、第三次大戦の始まりです。

ウクライナが、「失った領土を取り戻そうとする」ことは尤もなことです。しかし、戦闘により取り戻そうとすることで、この戦争を世界に拡大するリスクが高まるなら、勘弁してほしいものです。軍事支援をしている欧米諸国は世論に影響されず、状況を冷静に分析し慎重な対応をとる必要があります。

日本は、敗戦直後に占領された北方四島の返還に、長い交渉を続けてきましたが実現していません。領土を取り返すことは短期にできることではありません。なぜ、ゼレンスキー大統領は、侵攻前に中立化と自国の安全の担保について協議しなかったのか残念でなりません。


付録:ロシアによるウクライナのNATO非加盟の保証要請
(Ukraine–NATO relations–Wikipediaより引用)

2021年11月30日、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナにおける NATO のプレゼンスの拡大、特にロシアの都市を攻撃できる長距離ミサイルの配備、またはルーマニアやポーランドのものと同様のミサイル防衛システムの配備は、ロシアにとって「レッドライン」の問題であると述べた。

プーチン大統領はジョー・バイデン米大統領に対し、NATO が東方に拡大したり、「我々を脅かす兵器システムをロシア領土のすぐ近くに」置いたりしないという法的保証を求めた。

プーチン大統領によると、「何らかの攻撃システムがウクライナの領土に出現した場合、モスクワまでの飛行時間は7~10分、極超音速兵器が配備されている場合は5分です。

NATO事務総長イェンス・ストルテンベルグは、「ウクライナがいつNATOに加盟する準備ができているかを決定するのは、ウクライナと30のNATO同盟国だけである。ロシアには拒否権がなく、ロシアには発言権がなく、ロシアには、近隣諸国を支配しようとする影響力の範囲を確立する権利はない。」と答えた。

2021年12月1日、プーチン大統領は、ウクライナが NATO に加盟しないという西側諸国からの保証を得たいと述べた。

12月16日、NATOのストルテンベルグ事務総長は、同盟はウクライナの加盟問題についてロシアに譲歩しないと述べた。彼によると、ウクライナには保護を受ける権利があり、NATOとともに同盟への加盟の問題を決定するだろう。

12月17日、ロシア外務省は、「安全保障」に関するロシアと米国の間の合意案と、ロシアとNATO加盟国の安全を確保するための措置に関する合意案を発表した。特に、ロシアは、NATOがグルジアとウクライナの NATO への加盟と、「ウクライナ領土でのあらゆる軍事活動」を放棄することを提案している。ロシアはまた、米国に対し、旧ソ連に軍事基地を設置しないよう、また、これらの国をNATOに受け入れないよう求めている。

2022年1月9日、2022年1月のウクライナ訪問と東部の連絡線への訪問に続いて、EU 上級代表のジョセップ・ボレルは、欧州対外行動庁のウェブサイトのブログで、いわゆる2021 年12月にクレムリンによって代表された、ロシアの安全保証に関する「草案」は、1975年のヘルシンキ最終法の基本原則に反しているため、NATOと西側諸国がこれらのアイデアについて議論する意思があるからといって、それらを受け入れる意思があるわけではないと、次のように述べた。:

ロシアの指導部は、時計の針を冷戦論理の古い時代に戻そうとしているようだ。このタイプの影響範囲の境界設定は、2022年には当てはまらない。ヤルタ(会談)ではない。
— ジョセップ・ボレル

これに関連し、2022年1月10日、米国とロシアの外交官はジュネーブで安全保障会談を開催し、両国の軍事活動とウクライナ周辺での緊張の高まりについて話し合った。この会談で、ロシアの代表は、ウクライナとジョージアが2022年のマドリッド・サミットの決定に盛り込まれたNATOのメンバーになることは決してないという「具体的な保証」がロシアには必要であると述べた。

これに先立ち、ロシアのリャブコフ外務次官は、「軍事衝突のリスクを過小評価してはならない」と述べ、NATO の拡大を拒否する米国側は状況の深刻さを過小評価していると述べた。

一方、NATO事務総長ストルテンベルグは、NATOはウクライナの加盟に関してロシアと妥協せず、NATOへのウクライナの加盟はウクライナとその同盟国によって決定されると述べた。彼は同盟が、ウクライナが組織への加盟に必要な基準を満たすのを助けるだろう、と次のように断言した。

同盟は、ウクライナにその領土保全と主権に対する政治的支援、および実際的な支援を提供し続けている。これはまた、ウクライナが自衛する権利を持っているという明確なシグナルでもある。
— イェンス・ストルテンバーグ

会談に出席した米国首席外交官ウェンディ・シャーマンは、「閉鎖的NATOの門戸開放政策を非難することは誰にも許さない」と述べた。彼女は、ワシントンは米国と協力したい主権国家との二国間協力を放棄しないだろうと述べ、米国政府はウクライナの参加なしにウクライナについて、またはNATOなしでNATOについて決定するつもりはないと付け加えた。

2022年1月12日、ロシア-NATO 評議会の会議がブリュッセルで開催され、ロシアの代表と同盟の30の加盟国の代表が、NATOに対するロシア側の要求について議論した。


ストルテンベルグ事務総長は再び、ウクライナがNATOに参加する準備ができているかどうかの決定は、ウクライナと同盟の30の同盟国によってのみ行うことができると述べ、NATOは「新たなロシアの侵略」の場合に、東ヨーロッパでの存在を高めることを真剣に考えるだろう。また、NATO はモスクワの代表事務所を再開する準備ができている、と付け加えた。

シャーマン米国務次官は、NATOが門戸開放政策を放棄しないと述べた。ロシアの要求は受け入れられなかった。NATO同盟国は、ロシア側が交渉中に主張した、NATOの更なる拡大の不可能性と、20世紀後半の構成への復帰に同意しないだろうと述べた。

ロシアのグルシュコ副外務大臣は、NATOは当初、同盟が今日宣言している門戸開放政策を公言していなかったと述べた。政治的手段で安全保障への脅威をかわすことができなかった場合、ロシアは軍事的手段を使用するだろう、と次のように述べた:

この政策は1994年に登場し、ヨーロッパの安全保障の構築とはまったく異なる目的を果たした。安全に対する真の脅威を感じた場合に適用する一連の法的軍事技術的措置があり、私たちの領土が標的型攻撃兵器の標的と見なされているかどうかはすでに感じている。もちろん、これには同意できない。政治的手段が失敗した場合、軍事的手段によって脅威をかわすために必要なすべての手段を講じる。
— アレクサンダー・グルシュコ

2022年1月13日の第1回欧州安全保障協力機構(OSCE)会議で、ロシアの OSCE 常任代表であるアレクサンドルルカシェビッチは、ロシア連邦は、適正な時間内にセキュリティの提案に対する建設的な反応を聞かなければ、「国家安全保障に対する容認できない脅威を排除する」ための措置を講じることを余儀なくされるだろうと、次のように述べた。:

適正な時間内に行われた提案に対して建設的な反応が得られず、ロシアに対する攻撃的な行動が続く場合、適切な結論を導き出し、戦略的バランスを確保し、我々の国家安全保障に対し容認できない脅威を排除するため、必要なすべての措置を講じることを余儀なくされる。
— アレクサンダー・ルカシェビッチ

ラブロフ外相は、年次外交政策記者会見で、モスクワは「安全の保証」を求めるクレムリンの要求に対する西側諸国の反応を待っている「忍耐力を使い果たした」と述べ、従ってロシアは1週間以内に書面による回答を待っている。ラブロフ氏は、NATOが東方に拡大し、ウクライナや旧ソ連の他の国に軍隊を配備しないというモスクワの要求に対する西側諸国の反応をクレムリンが無期限に待つことはないと述べた。ラブロフのコメントは、ホワイトハウスがロシアのウクライナ侵攻の脅威は依然として高く、約10万人のロシア軍が配備されていると述べた翌日に出された。

翌日、ホワイトハウス報道官のジェン・プサキは、ロシア当局は、追加の外交を選択するか、さらに攻撃的な行動をとった場合には、2014 年よりも厳しい経済措置に直面するか、どちらの道を進むべきか選択しなければならないと述べた。

1月14日のLa Repubblicaとのインタビューで、NATOストルテンベルグ事務総長は、キエフはすでに軍政同盟への参加を申請しており、2008 年にNATOはウクライナとジョージアがメンバーになることを決定したが、加盟の正確な時期はまだ決定していないと述べた。

1月19日、ロシアのセルゲイ・リャブコフ副外相はロシアが加盟に反対している国のNATO加盟に投票しないという法的義務を負うことを米国に提案し、NATOの非拡大要件を減らした。クレムリンは、以前に提示したNATOの東への非拡大の保証と交換する準備ができている。2008年のブカレスト・サミットで下された決定は「除外されるべき」であり、米国は「これは決して起こらない」という一方的な法的保証を提供すべきであるとリャブコフは述べた。リャブコフは、ウクライナとジョージアがNATOのメンバーになることは決してないという立場は、クレムリンの優先事項だと述べた。彼によると、アメリカはそのような一歩を踏み出すために「十分な政治的意志」を持たなければならない。

2022年2月22日、ロシアはドンバスの反乱共和国を承認し、この地域に軍隊を派遣した。最後に、2022 年 2 月 24 日、ロシアはウクライナへの大規模な侵攻を開始した。

ロイター通信は、侵攻の頃、ロシア政府の補佐官がウクライナとの和平協定を仲介し、ウクライナをNATOから除外したと報じた。ロシア政府は、そのような申し出があったことを否定した。ロイター通信は、プーチン大統領に拒否されたと報告し、ゼレンスキーの支持を得たかどうかは不明であると述べた。

2022 年 9 月 30 日、ウクライナは正式にNATOへの加盟を申請した。

2022 年 10 月 2 日、NATO の 9 カ国の大統領は共同声明で、2008 年のブカレスト・サミットの結論に沿って、ある時点でウクライナが NATO に参加することへの支持を表明したが、ウクライナの申請については明確にコメントしなかった。
以上