温暖化防止、シナリオ2050
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データをもとに考える
日本の電源構成の再構築




  本レポートは、福島第一原発の事故の後、見直しが必要になっている電源構成、2015年末のCOP21で表明することが必要な温室効果ガス削減目標、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の見直しなどを考えるためのデータを紹介しています。  2015年1月
                            執筆 田中雄三
  


注) PDFですから、どのような表示倍率でご覧になっても
     構いませんが、本レポートはA5版として計画したものです。

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下記の「はじめに」と「おわりに」の項に、本書の概要が示されています。
          目  次

  はじめに

    1. 世界各国の電源構成

    1.1 脱原発を決めた国の電源構成

    1.2 発電電力量が多い国

    1.3 各国の電源構成

    1.4 世界全体の電源構成

    1.5 各電源の発電量上位20ヵ国

    1.6 電源の多様化

    1.7 各国の電気料金

    2. 石炭火力は最大の電力源
        2.1 世界のエネルギー消費の推移
        2.2 世界の発電電力量の推移
        2.3 石炭火力の発電効率
        2.4 石炭火力の技術
        2.5 石炭火力のCO2排出量と低減
        2.6 CO2の回収・貯留

    3. 原発が果たした役割と今後
        3.1 原発の導入
        3.2 各国の原発発電量
        3.3 原発新設の推移

        3.4 石油危機前後に原発が果たした役割
        3.5 今後の原発新設計画
        3.6 原発の廃止に係わるデータ

       4. 欧州と日本の風力発電

    4.1 風力と太陽光の発電コスト   

    4.2 なぜEUは再生可能エネルギーに熱心か

    4.3 世界の風力発電の概況

    4.4 主要国の風況マップ

    4.5 EUの風力資源

    4.6 日本の風力資源

    4.7 洋上風力の発電コスト

    4.8 本項のまとめ
       5. ドイツの事例をもとに考える太陽光発電

    5.1 ドイツの太陽光発電の設備価格   

    5.2 なぜドイツの太陽光発電は安いのか

    5.3 日本と世界の太陽光発電の設備価格

    5.4 日本と世界の太陽電池モジュール価格

    5.5 太陽光発電の買取価格の決定

    5.6 ドイツの太陽光発電買取制度の経緯
        5.7 ドイツの太陽光発電の費用負担

    5.8 ドイツの太陽光発電の事例から学ぶこと
       5.9 日本の太陽光発電の買取制度の実績

    5.10 日本の太陽光発電の大きな認定量の影響

    5.11 太陽光発電の導入想定量と認定量の乖離
       6. ガス火力は期待に応えられるか

    6.1 天然ガス利用の現状

    6.2 天然ガスの輸入

    6.3 原発をガス火力に転換すると

    6.4 天然ガスの漏洩による温暖化

    7. 中国のCO2排出量はどこまで増加するか
       7.1 CO2排出量の急増   

    7.2 統計データに対する疑念

    7.3 エネルギー指標の推移から考える
       7.4 中国のエネルギー構成

    7.5 中国CO2排出量の将来予測

    7.6 公的機関による中国CO2排出量の予測

    7.7 中国のCO2排出量の削減目標

    8. 日本の温室効果ガス、誰がCO2を増加させたのか

     8.1 京都議定書   

    8.2 GHGの削減量

    8.3 森林等吸収分と京都メカニズムクレジット
       8.4 部門別CO2排出量の推移

    8.5 2020年代の温室効果ガス削減目標

    9. 附属書Ⅰ国とEUの温室効果ガス排出量
        9.1 京都議定書の附属書Ⅰ国   

     9.2 附属書Ⅰ国などのGHG排出量

     9.3 GHG排出量の俯瞰的データ
        9.4 EUのGHG排出量の削減
        9.5 非CO2のGHG排出量
       10. ドイツの再生可能エネルギー拡大の長期シナリオ

    10.1 ドイツの長期エネルギー戦略

    10.2 その後の関連法と原発

    10.3 長期エネルギー・シナリオ

    10.4 主要項目の将来動向

    10.5 シナリオ2011Aの主な結果

    10.6 再生可能エネルギーによる発電の変動対策

    10.7 再生可能エネルギーへの移行の経済影響

    10.8 ドイツと日本の違い

    10.9 日本独自のシナリオ

        おわりに 
        データ出所・参照文献


 本書の概要と掲載図表例

1. 世界各国の電源構成
 世界各国の電源構成を50頁ほどで紹介しています。例えば最初の項は「脱原発を決めた国の電源構成」のタイトルで、チェルノブイリ事故を契機に原発を撤廃したイタリアの電源構成の推移、国民投票で脱原発を決めたが現在の原発比率が40%のスウェーデン、その他、脱原発を決めたドイツ、ベルギー、スイスなどの電源構成を紹介しています。また、OECD諸国などの電気料金も紹介しています。


2. 石炭火力は最大の電力源
 石炭火力は、CO2排出量は多いけれど、最大の電力源です。エネルギー確保の観点で、発展途上国を中心に、今後も石炭は重要であり、石炭火力のCO2排出削減は温暖化防止の重要課題です。


3. 原発が果たした役割と今後

 原発は、1960年代以降期待を持って先進国で導入され、石油危機の際は重要な役割を果たしました。それなりにリスクは認識され、軍事目的を除けば、大規模発電に特化して使用されてきました。今後も、発展途上国を中心に、必要なエネルギーを確保するため、多数の原発建設が計画されています。その他、日本で原発を撤廃する場合の金銭的負担や放射性物質の総量データなども紹介しました。


4. 欧州と日本の風力発電
 EUが導入を推進している再生可能エネルギーとは、主に風力発電のことです。EUには、風況が優れた立地が豊富にあります。また、化石燃料価格がもう少し高くなれば、風力発電のコストは、火力発電と同等になると考えられているようです。一方、日本で再生可能エネルギーというと、発電コストが大幅に高い太陽光発電に重点が置かれるのは、陸上に風況が優れた立地が乏しいためです。洋上なら、風況のよい場所がありますが、着床式風力発電を設置できる遠浅の海岸が乏しいことなどをデータで紹介しています。


5. ドイツの事例をもとに考える太陽光発電
 太陽光発電の欠点は、発電コストが非常に高いことです。加えて、日本での太陽電池モジュールの価格も、太陽光発電のシステム価格も、ドイツより大幅に高い実態を紹介しました。太陽光発電の高いシステム価格をそのままに、日本の固定価格買取制度では、高い買取価格が設定されました。再生可能エネルギーの導入では、国民負担の増大を抑制することを第一に考えるべきことを述べています。


6. ガス火力は期待に応えられるか
 CO2排出量が少ない天然ガスに対する期待は大きく、シェールガスの生産がそれを加速しています。しかし、発展途上国にとって、天然ガスを輸入して利用することは簡単ではありません。また、シェールガス生産を適正に行わなければ、漏洩メタンにより、原油よりも温暖化の影響が大きくなりかねないことも紹介しています。


 電源構成の見直しを難しくしているのは、温暖化防止を考慮しなければならないためであり、次の3項目を紹介しています。

7. 中国のCO2排出量はどこまで増加するか


8. 日本の温室効果ガス、誰がCO2を増加させたのか


9. 附属書Ⅰ国とEUの温室効果ガス排出量


 以上の情報を総括する目的で、下記を紹介しています。

10. ドイツの再生可能エネルギー拡大の長期シナリオ




 但し、ドイツを真似ようということではありません。ドイツとはエネルギー事情が異なります。日本には日本のシナリオが必要であり、それをもとに確りした検討を行い、電源問題の方向付けをすることが重要である、というのが本書の主旨です。


2020年以降の温室効果ガス削減目標に関する
「日本の約束草案(政府原案)に対する意見」

                 (筆者のパブリックコメント、2015年6月)

 日本は省エネや温室効果ガス削減が進んだ国であると思います。1人当たりのエネルギー消費や温室効果ガス排出量は、先進国の中で少ない部類に入ると思います。また、水力発電は総発電量の8%、風力発電の陸上の立地は限られ、原発を拡大する余地もありません。更なる温室効果ガス削減には、かなりの経済的負担が伴います。日本のエネルギー事情を考えれば、2013年比で26%削減する2030年の温室効果ガス排出目標は、概ね妥当なものと思います。

一方、世界の気温上昇を2℃以下に抑える目標や、2050年に先進国全体で温室効果ガス排出量を80%削減するという目標の達成に対し、26%削減では明らかに不充分です。

また、2013年比で26%減は、1990年比では表せば18%減になります。京都議定書の日本の削減目標が90年比6%減でしたから、2030年の目標が90年比18%では、世界5位の温室効果ガス大量排出国、世界3位の経済大国の目標として、諸外国から賛同は得られないでしょう。

ハイブリッド車やLEDの日本での普及は目覚しく、省エネは進展すると思います。また、今度こそ、業務部門や家庭部門のCO2排出削減も期待できるかもしれません。しかし、更に温室効果ガスを削減するには、かなりを再生可能エネルギーの導入拡大に頼らなければならないでしょう。その場合、日本は安価な風力発電の立地が限られているため、発電コストが高い太陽光発電に依存せざるを得ません。

顧みれば、この3年間に実施された再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、国の制度として、あまりにもお粗末でした。具体的には、

①固定価格買取制度は、かなり危うい制度であり、慎重な対応が必要なことは、少し考えれば分かることです。その種の指摘も多数ありました。それにも拘わらず、政治は「制度開始から3 年間は高い電力価格で買取り、発電事業者が充分な投資収益を確保できるようにする」と法律に書き込んでしまいました。

②太陽光発電の買取価格は、ヒアリング調査をもと決められましたが、発電事業者を代表したいい加減な主張を、ほぼ全面的に受け入れたものとなりました。付け加えれば、買取価格の検討委員会の委員長は、その後、その発電事業者が設立した団体の理事を務めました。

③太陽電池モジュールは国際的に取引されている商品ですが、買取制度開始時の日本の市場価格は、ドイツなどの諸外国と比べ、極めて高いことが、国際エネルギー機関(IEA)やドイツ太陽光工業協会(BSW)の公表情報で、世の中に知られていました。それにも拘わらず、高い市場価格をそのままに、なんら対策を講じることなしに、高い買取価格が設定されました。

④高い買取価格を設定すれば、低金利時代にあって安全確実な投資と見做され、太陽光発電のバブルが発生することは、ドイツの事例から想像できたことです。また、その投資収益を負担するのは、主に投資余力が乏しい電気利用者です。財政赤字の政府には都合がよい制度かもしれませんが、電気のような必要不可欠なものに対する国の制度として不適当です。

⑤太陽光発電バブル発生の危惧が現実になったことは、周知の通りです。再生可能エネルギーを拙速に導入拡大しなければ、必要なかった筈の経済的負担を、電気利用者はこの先20年間に亘り払い続けなければなりません。

再生可能エネルギーを否定する訳ではありません。しかし、どう言い訳をしようと、太陽光発電の発電コストが高い事は明らかです。従って、少ない国民負担で、如何に導入拡大するかが重要になります。

固定価格買取制度を継続するのならば、20年間に亘り初年度価格で買取続ける制度であることを忘れないで下さい。制度開始当初の買取価格が高い段階で、太陽光発電の導入バブルが発生したのでは、電気利用者は堪りません。2030年の削減目標なのですから、拙速に導入拡大を目指すのではなく、先ず、再生可能エネルギーの設備価格低下の対策を講じて下さい。

政治や行政は、過去3年の失敗を反省し、少ない国民負担で温室効果ガスを削減をすることで評価される、ことを自覚して戴きたいと思います。